市岡思い出数珠つなぎ
市岡思い出数珠つなぎ
2010年5月13日
ルーツを遡れば、市岡高校がそこにあり(17期 市川 貢さん)
17期 市川 貢さん
わが母校の卒業生は教員志望が多いと聞いていたが、17期もその例外ではなさそうだ。大学教員だけでも10名に近い。私もそのうちの一人だが、
それは小さい頃からの夢であったわけではない。
気が付いたら教員になっていた、というのが本音だ。
では、そもそもいつごろから教員への道を意識し始めたのだろうか。
ルーツを遡ると、やはり市岡高校にたどり着く。
この「思い出数珠つなぎ」の第1回目担当の山添弘三氏はバレー部OBで、
私の1年先輩に当たる。初対面の時は、山添氏をクラブのOBだと思っていた。
坊主頭の新入生にとって、長髪で威圧感と厚かましさを兼ね備えた(笑)先輩を見て、
OBと勘違いするのも無理はなかった。卒業後、男子バレー部のコーチをされるようになった
山添氏からは、バレーにかける信念やひたむきな情熱など、学ぶべき点は多かった。
練習後は他のOB・OG諸氏を交えて、お好み焼きや餃子を食べながら、
毎日のようにバレー談義に花を咲かせたものだった。
私が母校の女子バレー部のコーチを始めたのは、大学に入学した春、
クラブ顧問の原泰根先生から依頼されてのことだった。原先生は国語の教師であったが、
民俗学の研究者としても忙しい日々を過ごしておられた。
そんな先生の針中野のお宅に何度も泊まらせていただいて、
教員であり研究者であった原先生の生き様に触れる機会を得た。
近畿民俗学会の例会にも時々出席させていただく中で、
「研究」の大変さ・面白さを無意識のうちに感じ取っていたのだろう。
教員を目指すことになったもう一つの要因は、3年間バレー部のコーチを務めることで、
「教育」というものに直接向き合えたことである。当時はそんな大それた意識はなかったが、
大学1年生が課外活動とはいえ、高校教育の一翼を担っていたのである。
言うまでもなく「研究と教育」は大学教員に課せられた大事な使命であるが、
偶然にも私は母校のバレー部のコーチとして、この二つの使命に同時に関わるという
千載一遇の機会に恵まれた。
こうして私は大学で「マーケティング」と出会い、大学院で学ぶ過程で、
ようやく研究者の道を選ぶ決心をすることになる。
昭和51(1976)年に京都産業大学経営学部に勤務するようになって、33年目が始まった。
ゼミの卒業生も1,000名の大台目前である。
定年までにはさらに300名の卒業生を輩出できそうだ。
在職40年で1,300名を超えるという、この卒業生の数を、私は密かに誇りに思っている。
ところで、私の専攻する「マーケティング」は、平たく言えば、
消費者のニーズを発見し、それを満たす活動である。
消費者の立場に立って「思いやりの心」で接しないと、相手は満足しない。
マーケティングは「思いやりの心」を真髄とする活動であるが、
この点で、マーケティングとバレーボールに共通する部分があるように思う。
バレーボールはチームプレーなので、仲間の動きを全員が絶えず
見守っていなければ始まらないし、仲間を思いやらないことには、
チームワークも生まれない。入部した以上は最後まで部活を続けて、
卒業後も永く付き合える仲間であってほしい、というのはコーチ時代の私の願いであったし、
今も学生に言い続けている言葉である。
母校のクラブで、大学のゼミや顧問をしているクラブで、
そうした関係を大事にしてもらっているのは、何にも増してうれしい。
人と人とのコミュニケーションが見直される時代を迎え、
相手と「思いやりの心」で接することの重要性を改めてかみ締めている。
家族関係もそうであろう。
会社や組織も同様で、内外のステークホルダー(利害関係者集団)に向けての
コミュニケーションは「コーポレート・コミュニケーション」と呼ばれ、
世界的に注目を浴びている。
不祥事を起こしている企業はいずれも、広報や
コーポレート・コミュニケーションへの意識が薄く、
それに対応する仕組みも欠如している。
そこで京都産業大学大学院マネジメント研究科では、平成21年度に向けて、
わが国で初めてコーポレート・コミュニケーションが学べる大学院を
設置すべく準備を進めている。
同窓生諸氏にも注目をしていただきたい。
この原稿の執筆中に、松下電器産業が「パナソニック」への社名変更を決めた。
同社の新社長、大坪文雄氏は市岡高校16期で柔道部OBである。
「パナソニック」への社名変更は、コーポレート・コミュニケーション時代を
先取りした大英断である。
母校の後輩として、またコーポレート・コミュニケーションに関わる研究者として、
大坪新社長に最大のエールを送りたい!
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