12期の広場
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2011年3月1日
人生の分岐点

圓尾 博一(3年6組)
今年4月で古稀を迎える。70年は短いような長いような。しかしその間の時々に、右に行くか左に進むか、自分なりに選択して歩んできたが、誰しもそれは同じであろう。そのチョイスが正しかったかどうか、それは自分自身にもわからない。
市岡高校から大学へ進学するとき、理科系をチョイスした。私の身近な友人は「君は文科系にむいているのになぜ?」とその時アドバイスしてくれたが、家が貧しかったので、その当時理科系に進んだ方が、初任給が数千円高かったという、何ともミミッチィ条件が私の頭を縛っていたように思う。しかしその友人のアドバイスは、至言であることが後々わかった。
私は大学で応用化学のコ-スへ進み、無事卒業して、東洋リノリュ-ムという会社に就職、研究室(当時ブ-ム)へ配属された。この会社はその名前の通り、主力商品としてリノリゥ-ムを製造していた。現在は全く死に絶えているが、今から50年ぐらい前は、洋式建築の床材として、例えば病院や図書館、事務所などに使用されていた。変わった例としては宝塚歌劇場の舞台に貼られたりした。
この記事の最下部に圓尾 博一さん(3年6組)の個展の案内がございます。
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これは亜麻仁油という油を固まらせて、それをベ-スに天然のコルクや木粉を混ぜ長尺の床材を作るものであるが、製造に膨大な時間(半年)がかかり、致命傷としてアルカリ水に会えば、元の泥になってしまう。
私は研究室で、短時間でしかもアルカリに強いものを製造できないか、というテ-マで研究することになった。しかし私には化学的な才能は皆無であることが、友人の至言を裏付けることになってしまった。よく会社は6年間も無能な私に給料を払ってくれたものである。化学というステ-ジでは私は生きないし、生かされないことを痛感し、その頃から沸々と「絵を描きたい」と思うようになり、何かのはずみで持っていた教員免許(工業)にすがることにした。
8月に採用試験に合格したが、待てどくらせど工業高校の空きはなく、3月末までに決まらなければ「合格」はキャンセルになる。ほぼあきらめていた3月20日、当時厚木市の寮にいた私に、晩方、八尾養護学校の校長から「4月1日から来ませんか」という福音のような電話がかかってきた。養護学校って何だろう、と思いながらワラをもつかむ気持ちでお願いすることにした。それからの10日間は、仕事のまとめや引継等あわただしい日々を過ごし、4月から念願の教員生活に入った。その年、リノリュ-ム時代に付き合っていた彼女とも結婚し、今も所属している美術文化協会という公募団体に出品し始めたので、この1971年という年は私の人生の分岐点として、忘れ難い年である。
知的障害をもつ生徒たちとのぬくもりや、帰宅してからの絵画制作の日々は苦しいけれどもこの上なくありがたいものであった。しかも油絵具という画材はリノリュ-ム時代に私を苦しめていた亜麻仁油の乾燥という、全く同じプロセスをもつ化学反応であり、私の人生における宿縁のようなものを感じている。
それから40年、春と秋に新作を発表してきて、あと何年続けられるかわからないが、資力と体力が続く限り、そのペ-スで新作を作り続けることだろう。
一体何のために?私の死後、膨大な「粗大ゴミ」を前に息子は困まるのではないか?実際そんな話を絵描き仲間からしばしば聞くことがある。でも絵を描くことは1971年にチョイスした私の宿業である。「描く」という行為は、私のごく個人的な行為であるが、その作品をみてくれる人の心に美的テレパシ-を届けることができたら、それは社会的行為であり、世の中を豊かにするものであるに違いない。
最近、奈良の女性映画監督の作った「玄牝」(ゲンピン)という映画をみた。妊娠した女性の自然分娩に取りくむ老医師と施設の物語で、女性の分娩シ-ンがまざまざと映される。私など妻の出産にも立ち会っていない者にとっては、ど肝をぬかれてしまう。しかし何と神々しい。
この映画の最後のテロップに「谷神死せず、これを玄牝という」と老子の詩が映される。
私も5年前「玄牝」という題で作品を発表した。私の作品よりはるかにすぐれて奥深い作品であるが、この女性監督のテ-マに私は強いシンパシ-を感じる。
生命を疎かにする最近の風潮の中で、生命という宇宙的根元の意味をみる人に少しでも伝えたい。
そういう気持ちでこれからも作品づくりをするつもりです。
圓尾博一さんが「アリス-ガラス絵展-」を下記要領で開きます。
昨年生まれた女の子のお孫さんの健やかな成長を願ってのガラス絵展だそうです。水曜日と土曜日の夜(ただし26日の土曜日は除外して)は作者の圓尾さんが会場に居るそうです。
同窓生の皆さん、是非、お出かけ下さい。
期 間: | 2011年 3月 5日 ~ 3月 31日 |
時 間: | 昼 12時 ~ 夜 7時まで(最終日は5時まで) |
場 所: | 喫茶ギャラリ 「トウリ-ピピット」 大阪市北区天満橋5-7-8 山田ビル2階 tel 06-4800-2356 注記:会場はJR天満駅から徒歩2分です。 |

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