12期の広場

12期の広場

「なにわ福島ものがたり」 の紹介(福島区歴史研究会30周年記念誌)

 先日、末廣訂君から「なにわ福島ものがたり」を送っていただきました。

 これは福島区歴史研究会が発足30周年に際して発刊された記念誌で、B5版、全236ペ-ジからなる労作です。

 福島区歴史研究会は「12期の広場」でもたびたび、お世話になっています。昨年掲載しました「古地図展」は福島区歴史研究会が主催団体の一つ、武田博君の「ジエ-ン台風」の話しもやはり歴史研究会の「災害展」の準備やその資料収集が下地になっています。また同窓生である末廣訂君、武田博君の両名が会員であると同時に、そのほかの会員に母校の先輩や後輩方がおられ、市岡高校と浅からぬ縁がある研究会でもあります。

 「なにわ福島ものがたり」の表紙デザインは、大阪市中央図書館所蔵の『浪華の賑ひ三篇』、それに『野田ふじ』の紫色をグラデ-ションにしてかぶせています。

 歴史研究会の記念誌ですから、専門的、場合によれば学術的な「堅い書籍」ではと思ったのですが、実際、手に取ると、題名そのままの由緒深く、懐かしく、そして感銘を呼ぶ「なにわ福島ものがたり」なのです。なにより、福島区に生まれ育ち福島を愛する気持ちにみちあふれた本であること。間違いありません。

 巻頭部一連の寄稿文に続いて、「遺稿・村から町へ『鷺洲』のうつりかわり」から「芦分紀行-近世福島区域をめぐる」までの大目次が12編。いずれも個性的な切り口で読ませます。


 また写真や写真資料を初め、図や地図なども配置添付されていて大層興味深いものになっています。末尾に「福島区歴史研究会三十年年表・出版物」までがついていますが、構想以来、2年かけての執筆、編集、校正、出版作業のご苦労がしのばれます。

 「12期の広場」ですから市岡高校ゆかりの執筆者に焦点を当てる訳ですが、同窓の末廣訂君が「摂州西成郡 海老江村物語」と「松下幸之助創業の地 大開で除幕式典」の二編、42ペ-ジを書いています。「12期の広場」に何回か書いていただきましたが、ボリウムは勿論、項目や内容、資料などの面でこちらが圧倒しています。またの機会に「広場」で紹介したいと思います。

 「野田の藤は牛島の藤(埼玉県春日部市)春日野の藤(奈良春日大社)と並び日本の三大名藤の一つ」と書き出し、「野田の藤」について歴史的、系統的に考察しておられる藤三郎氏は、2年先輩の10期生です。藤氏はこれ以外にも「野田城と戦国三好一族」、「『二十一人討死』の合戦と一向一揆」の合計3編、全63ペ-ジを執筆しておられます。

 最後の「芦分紀行-近世福島区域をめぐる」を書かれた田野登氏も市岡出身で20期です。

 田野氏は「田蓑橋」から始まり「安治川橋」、「新堀」までの40カ所を豊富な歴史資料を引用しながらの全38ペ-ジにわたって書いておられ、読者に洒落た道行きを楽しませてくれます。

 斯く言う私も福島の隣、此花区の出身で、海老江、野田、玉川、鷺洲など、この本に出てくる地名はすべて昔馴染みですが、この本を通しての「新発見」は数え切れませんでした。また「重層化された福島という地域の歴史のダイナミズム」(編集後記)との表現には全くの同感であると同時に、市井にあってもなお今、地域の歴史に光をあてる歴史研究会の皆さんの熱意にただただ、感激するばかりです。

 関心のある方は是非、ご一読下さい。1,300部の発行で、頒布価格は1,200円。主な販売店は野田新橋筋商店街内の林書店(tel-06-6441-2965)だそうです。

 (張 志朗-記)

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