21期

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【高21期】「震災川柳」が発刊されました

高校21期  前川健一
 

我らが21期生の長谷川君が「震災川柳」の増補版を出版しました。東北大学で教授をやっている、あの長谷川啓三君です。※1 第一版は自費出版で、南三陸町の旭ヶ丘地区の方たちが、仮設もまだない発災後1ヶ月ほど経ってから詠み始めた作品を纏めたものでした。

今回の増補版は第一版の内容に、それから二年後に同じ方達を中心に詠まれた作品と、調査結果などが加わっているのだそうです。※2 二年経ってガレキの処理が進んだとはいえ、まだ仮設住まいの方が多くいらっしゃいます。そんな方達の、決して望んでそうなった訳ではないが、少しは取り戻した「日常」が、言わば日記のように笑いを含んで綴られている、といったところでしょうか。

今回は自費出版ではなく、「JDC出版」という港区にある会社が、長谷川君の志を汲んで店頭にも並ぶ市販本にしてくれたようです。※2
幸い、NHKラジオ第一で、震災二年半にあたる、この11日に全国ネットで紹介されました。昨年はTBS系テレビで東北、北海道を含む関東地区で放送され、関心を集めたそうです。今回も東北地区では放送の予定があります。

臨床心理学を専門とする彼の立場に自分を置こうとすると、その立ち位置を設定するのが意外と難しいことに気づかされます。
通常でも、精神心理的な問題そのもの、あるいは問題を抱える人達に対峙しつつ、援助・改善・予防・研究、あるいは精神的健康の回復・保持・増進・教育への寄与と拡がりがあります。そこに、研究者・教育者としての立場を超えて、いわばボランティアとして、作品の川柳を散逸させずにまとめ、出版にまでこぎ着けられた訳です。(また前川が難しい話をしている<屁理屈を捏ねている>、という声が聞こえて来そうですが。※3)

僕は自費で出した第一版の話を彼としたときに、川柳という着想が良かったり※4――これは彼によると大阪の育ちが市岡の血がそうさせたらしいですが――、臨床的な効果が期待できたとしても、「長谷川君自身(と学生達)が地元に住む被災者であったから、サポートを受け入れてくれた」という側面があったのではないか、と言いました。本当のところは旭ヶ丘地区の方たちに聞いてみないと判りませんが、今でもそんな気がしています。

書籍という形にはできました。次の段階は、広くみんなに知ってもらうことであろうと思います。※5

とにかく五・七・五の短い言葉の中に、関西の報道ではあまり扱われない、現地の方達の心模様が伝わってきます。サラリーマン川柳とはもちろん心象風景が違っていますが、ひょっとしたら国土強靱化や東京オリンピックに向けて、皆さんの態度を決めるヒントになるかも知れません。
 


以下で心理学の領域に触れた部分がありますが、私はズブの素人で、専門家の方の検証に耐えるものではありません。割愛しようとも思ったのですが、サラリーマン川柳と違うのは判るとして手に取るのを迷う方に、むしろ素人の雑感の方がひょっとしたら参考になるかも等、勝手な考えで書きました。読み流して頂ければ幸いです。

※1: 長谷川 啓三。東北大学大学院教育学研究科 教授。
※2:  「震災川柳(増補版)」 ISBN978-4-89008-500-2
著者: 南三陸「震災川柳」を出版する会 (2013/8)  価格: ¥ 1,050  (税込)
紹介の立場上長谷川君に確認しましたが、出版社と利益をどうするという話はしていない。出版社は収益が出るものとは考えていないようだった、とのことでした。
「仮に利益が出たら支援活動に廻したい」と言っていました。
※3: 皆さんを仮に被災者の立場に置いてみてください。例えば、そこによそ者が研究目的で来たとします。ご自身はそうは考えなくても「なんだ俺たちはモルモットかよ!」と言う人が出てきたりしてもおかしくはないと思われませんか?
(旭ヶ丘地区の方たちがそうだ、というわけではもちろんありません)…。
※4: PTSD(心理的外傷後ストレス障害)と言えば、大脳に器質的病変(例えば眼窩前頭皮質の萎縮)を伴いかねない疾患です。例えば、そのPTSDの予防法として一時期提唱された心理的デブリーフィング等についての記述だと思いますが、厚生労働省のガイドラインでも 「一般に、体験の内容や感情を聞きただすような災害直後のカウンセリングは有害であるので、行ってはならない。」と明記されているそうです。素人の私の理解では、セラピーもどきを安易に強いると逆効果になりかねない、結局は喋ってくれるまで待つことになる、といった感じかと受け取っています(そういう意味で予防も治療も簡単ではない)。
ということで、最近では個々人やそれを取り巻くサポートの持つ自発的・自助的な回復力が改めて見直されてきているのだそうです。
驚くべきことに、南三陸の方たちは、川柳の詠唱を通してこうした障壁を易々と(?)乗り越えてしまった、ということになるのでしょうか?
このあたりのことに触れたのだと思いますが、長谷川君は後書きで「認知行動療法といわれる考え方に今回の経験を加えて、『笑いは、それを含むことで嫌悪刺激に近づきやすくする、今回、既に接近を観察できた』と指摘しています。
※5: 実証科学的な成果として認められるには、地域の方の理解と協力が得られたとして、これから長い経過の観察や仮説の鍛錬がいるのではないでしょうか。

 

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